相続人が複数名いる場合の遺産分割協議
相続人が複数名いる場合、法定相続分でそのまま遺産共有状態を続けるというのは現実的でなく、どこかのタイミングで遺産分割を行います。遺産分割は遺産共有状態を解消して、誰が、どの遺産を、どのような割合(単独なのか、共有であればどの程度の持分割合)での取得なのかを決める重要なプロセスです。遺産分割は相続人間で揉めているケースであれば裁判所で行われることもありますが、一般的には当事者間の話し合い(つまり「協議」)で行われます。この協議のことを遺産分割協議といい、遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、その遺産分割協議書は相続税申告にあたって税務署に提出します。
※提出は原本ではなく写しで構いません。
遺産分割協議書が成立したことを証明するために、各相続人がサインを行い、実印で押印します。そして実印で押印したことを示すために、各相続人の印鑑証明書も税務申告において税務署に提出するのです。
以下において、相続税申告を行うにあたってどのような点に注意して遺産分割協議を進めるべきなのか、札幌の相続税理士が解説します。
遺産分割協議の注意点1:迅速な遺産調査を!
遺産分割協議を行うためには、前提としてどのような遺産があるのか、という点をはっきりさせなければなりません。被相続人がエンディングノートなどに遺産の内容を明確に記していたのであれば別ですが、そうでなければ遺産の調査をしなければなりません。ところで遺産分割協議それ自体は、いつまでにしなければならないという決まりはありません。なかには被相続人の死後10年を経過した後に協議を行う人もいるくらいです。
しかし相続税の申告は、相続開始を知ってから10か月以内に行う必要があります。申告書の作成にかかる時間を加味すると、遺産分割協議それ自体は申告期限の2か月前くらいに終わっていることが理想であり、そうなると、相続開始を知って8か月目くらいには遺産分割協議書への署名を進めたいところです。このように、相続税申告がある場合は申告期限が決まっているわけですから、さほどの時間的な余裕はないといえます。
ここで知ってほしいのは、遺産の調査にはものすごく時間がかかる、という点です。遺産の調査といえば不動産は名寄帳の取得、上場株式は証券保管振替機構への開示請求からの証券会社の残高証明書等の取得、銀行預金は各銀行での残高証明書等の取得という手続きを経て行われます。この調査だけで、だいたい1~2か月くらいはかかると思っておくとよいでしょう。
遺産調査をしていて遺産分割協議が遅れてしまった、とならないために、早急に遺産調査に着手することをおすすめします。
遺産分割協議の注意点2:相続人調査も早急かつ念入りに!
遺産調査と並行して行いたいのが相続人の調査です。相続人の調査というと難しく聞こえますが、簡単に言うと、戸籍の取得を通じて相続人を確定させる作業です。相続関係にもよりますが、相続人調査にも相当な時間がかかるケースがあります。たとえば相続人が第三順位の兄弟姉妹にあたる場合です。第三順位の者が相続人だと明確にするためには、次の戸籍の収集が必要になります。
収集できた戸籍を束にして厚さを測ったところ、2~3センチになる、ということもあるでしょう。
この相続人の調査は、相当な時間がかかるからこそ早急に行う必要があるだけでなく、念入りに行うべき理由があります。その理由とは、「遺産分割協議には、法定相続人全員の参加が必須だから」です。法定相続人全員が参加していない遺産分割協議であれば、残念ながら遺産分割協議を行ったことになりません。
仮に、存在を知らない非嫡出子(法律婚ではない男女から生まれた子)がいた場合に、その存在を無視してなされた遺産分割協議であれば遺産分割をしたことにならないのです。
ところで相続税申告で大きな減額の控除が認められる「配偶者の税額軽減」は遺産分割が終わっていることがその適用のための要件になっています。想像してください。相続人調査をおろそかにして「相続人全員」で遺産分割協議を行って申告したところ、後日、他にも法定相続人がいた場合、相続人全員で遺産分割協議を行ったことにはなりません。結果、配偶者の税額軽減の適用を受けることができず、場合によっては数千万円の相続税負担が生じてしまうことになります。
遺産分割協議の注意点3:後日財産が発見された場合に備える
遺産調査を行って遺産分割協議を行ったとしても、後日「その存在を知らなかった相続財産が発見された」という場合もあります。「後日知らない相続財産が出てきた場合」に備えるため、出てきたときにどのように対応するか決めておくとよいでしょう。
決め方の一つ目として、「存在を知らない相続財産が出てきた場合は、〇〇(たとえば長男)の取得とする」という形で決めておくのです。この文言を遺産分割協議書にも盛り込むことで、何か他の財産が出てきたとき、誰の財産なのか不明確で困る、という事態はなくなります。
ただし「後日発見された財産は長男が~」という文言を盛り込んで遺産分割協議書を作成したところ、後日発見された財産が想像以上に高額であった場合、相続人間で問題に発展することもあります。たとえば後日北洋銀行に5000万円の定期預金があったことが発見されたという場合、それが自動的に長男のものとなってしまっては、長男以外の相続人は納得できず、弁護士を立てて遺産分割協議のやり直しを主張するかもしれません。
札幌相続相談所がおすすめしているのは二つ目の決め方であり、それは「後日発見された財産があった場合は、そのときまた話し合う」とし、遺産分割協議書にもその旨を記載することです。遺産分割協議書を作成して相続税申告をした後に相続財産が出てきてしまった場合、それが小さな評価額のものであっても再度の遺産分割協議書を作成する必要があり、それは非常に手間です。しかし予想以上に大きな相続財産が発見された場合に相続人間で再度の協議の場を持てるという意味で、無用なトラブルに発展する可能性が低く、安心だといえます。
札幌の相続税申告は札幌相続相談所へ
札幌相続相談所は、税理士のみならず司法書士資格をも有する代表者が運営しております。だからこそ相続人調査、遺産調査、遺産分割協議書作成、相続税申告まで一気通貫で安心のバックアップ体制だと自負しています。2026年8月現在で、担当した申告案件の税務調査実施率は2%未満であり、税務調査において、評価間違いや税理士の落ち度によって財産の計上漏れが指摘されたことは現在一件もありません。
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