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名義財産の名義人が死亡
相続税申告のご相談に数多く対応していると、名義財産の名義人になっている側が死亡する、というケースがあります。「名義預金の名義人が死亡した場合の相続税申告<解決事例>」でも解説しましたが、本記事ではその場合のリスクについて解説します。
札幌市西区在住のAさん(女性、60歳)が死亡しました。Aさんの相続人は配偶者のBとAB間の子であるCとDの三人です。Aさんはもともと専業主婦であり、これまで収入はなく、年金をもらう年齢でもありませんでしたから固有財産は持っていないと予想される属性です。
配偶者相続人であるBさんは元国家公務員であり、生涯年収は一般の方よりも多いといえます。しかし転勤の多いBさんの通帳はずっとAが管理し、そのBの口座にはお金はほとんど残っていませんでした。一方でほとんど所得という所得がなかったAさんの口座には、なぜか7000万円の預金があります。それも死亡する前3年間で複数回にわたって入金があり、結果死亡時には7000万円の預金になっていました。
配偶者相続人であるBさんは元国家公務員であり、生涯年収は一般の方よりも多いといえます。しかし転勤の多いBさんの通帳はずっとAが管理し、そのBの口座にはお金はほとんど残っていませんでした。一方でほとんど所得という所得がなかったAさんの口座には、なぜか7000万円の預金があります。それも死亡する前3年間で複数回にわたって入金があり、結果死亡時には7000万円の預金になっていました。
AさんBさんのような夫婦は多いといえます。転勤の多い夫の代わりに夫の通帳を預かり、妻が家計を支えるために夫の口座から生活費を引き出し、余ったお金を貯めている、、、という状況です。
相続税申告を専門とする税理士事務所が運営する札幌相続相談所に寄せられた相談としては、「死亡したAについて相続税の基礎控除を超えているため相続税申告をして欲しい」というものでした。
名義のまま処理すること自体は簡単ではあるが
相続税申告の相談を多く受けていると、やはり毎回聞かなければならない質問項目というものがあります。そのなかに「その財産はどうやって貯まったのか」というものがあります。相続税の課税対象になっているというからには財産の規模は上記数パーセントの属性だといえます。このような高額な財産を、どうやってつくったのか、ということは税務調査があった場合にも必ず聞かれることです。宝くじがあたった、被相続人が相続人になる相続が過去にあってその際に多額の遺産を取得した、という事情があれば納得ですが、Aさんのように専業主婦で年金収入すらなかった人が7000万円もの預貯金を持っているのは不自然極まりないといえます。
典型的なケースとして、Bの預金から引き出したお金を、管理のためにAの口座に移していいたという場面があります。AB間で「あげる・もらう」という約束はなく、ただただ管理のためにAの口座にお金を移していたのです。
この場合に、A名義の口座にかかる残高証明書を銀行で取得し、7000万円がAの財産だという形で申告すること自体は難しくはありません。
税理士のなかにも、深く考えずに「名義のまま処理すればよい」と考えている者もいるかもしれませんが、これは非常に恐ろしいことです。税務申告は「実質」が最も重要であり、「形式」である名義のまま処理することは正しい処理とは言えません。また、深い検討をせずに名義のまま相続税の処理をすることは、非常に大きなリスクがあると札幌相続相談所の税理士は考えます。
リスクその1:二次相続の税務調査で問題になる可能性
我々税理士の世界では、「一次相続」「二次相続」という言葉を多用します。一次相続は書いて字のごとく初めに発生する相続のこと。Aさん一家をめぐっては、Aさんの死亡こそが一次相続です。一次相続で相続人になった人が死亡してまた相続が発生することを「二次相続」といいます。一次相続においては、遺産規模7000万円であり、相続人が3名いてなおかつそのうちの一人が配偶者相続人であることから、相続税の納税額は大きくはありません(配偶者相続人がすべてを相続した場合は相続税額はゼロです)。
このようなことから、一次相続において7000万円を名義人であるAさんのものとして申告したとしても、税務調査に発展しない可能性が高いと思われます。税務調査の建前は「遺産規模にかかわらずどの案件でも確認が必要だと判断したら調査に入る」ということですが、実際は遺産規模が大きな案件の方が調査の対象になる可能性が高いことは当然だといえます。
一方で、遺産規模が1億円未満であったとしても、「無申告」であれば調査の対象に選ばれやすいといえます。税務署にはこれまでの課税状況がデータとして蓄積されていますから、過去の所得の状況等によって「この人は亡くなった場合に相続税申告の対象になるだろう」というリストがあります。Bさんのように一般的な方よりも収入が高かった場合はそのようなリストに載っている可能性があり、「リストには載っているけれども申告がされていない」という状況であれば「無申告」の疑いがあるため、税務署から何らかの接触があることは自然なことです。
以下では、Aさんが死亡した後にあまり時間を絶たずしてBさんが死亡した場合に、Bさんの遺産が基礎控除未満であるとして相続税の申告をしなかったとして、無申告の疑いでBさんの相続税申告に関して調査が実施されたと考えてください。
税務署としては「実質」を重視しますから、Aさんの名義になっていた預金はBさんの預金であると認定を行う可能性があります。そうなると、Aさんの遺産として分割していても、Bさんの相続においてその分割は何ら意味のなかったことになり、もう一度Bさんの遺産として分割する必要が生じます。AB間の子であるCとDが聞き分けよく、そのことを理解できる方であればよいですが、そうでなければ混乱が生じます。
結局、名義のまま相続税申告をすればよい、という単純な話ではないのです。
リスクその2:名義人への生前贈与扱いにある可能性
リスクその1の話であれば、結局Bの相続税申告を行い、相続税額と無申告加算税等を支払えば済むように考える方がいますが、話はそんなに単純ではありません。深い検討をせずに、仮にAさん名義の財産をAさんのものとして申告をしていたとします。そうなると、申告を行った相続人としては、Aの申告書に記載した財産は「Aのものである」という認識だということになります。
もしAさんの相続税申告で税務調査があった場合は、経験豊富な税務調査官であれば「Aに所得がないこと」「Aが相続人になった相続が過去においてなかったこと(つまりAが固有財産を築けるだけの事情がないこと)」「Bは一般の方以上に所得があり、散財癖もないのにB名義の財産がない」という事情であれば、「Bの財産がAに移っていて、おそらくは名義財産なのだろう」という予想はつきます。
しかしながら相続税申告では7000万円の預金は「Aのもの」として申告をしているのです。この場合、過去に「BからAに生前贈与があったのではないか」と疑われることになります。AB間には贈与契約書等はないとしても、A死亡の前3年間でBの口座からAの口座に数千万円が移ったという記録に注目し、A死亡前の三年間について「生前贈与があったのではないかですか」と質問されるのです。
この状況で調査官のペースに乗せられて生前贈与があったという方向に話が進んでしまうと、「では時効になっていない年分の贈与税の申告と納税をしてください」と言われてしまいます。贈与税は累進税率ですので、たとえば一年で数千万の贈与があったと認定されてしまうと、納税額は1000万円以上になってしまうことも考えられます。
相続税専門だからこそ
名義のまま処理すること自体は難しくない点は既に述べたとおりです。税理士のなかには、「面倒だから名義のまま申告を進めてしまえばよい」と考える者もいるようです。相続税申告の税理士報酬は一般に高額であるものの、インターネットなどで非常に安価にサービスを提供している税理士事務所がありますが、そのような事務所では、もしかすると深い検討はしていないのかもしれません(といいますか、安価な料金では深い検討まで行うことは難しいというのが現実です)。
結局、Aさんの相続税申告においては7000万円の預金はAさんのものとして申告をしませんでした。もちろん検討に検討を重ね、もし税務調査があった際に「Aの遺産ではない」と説明することができる準備をした上での対応です。
札幌相続相談所を運営する当税理士事務所は相続税専門であるからこそ、細心の注意を払って検討を重ねて申告書を作成しています。札幌・札幌近郊で相続税申告にお困りの方は札幌相続相談所にお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料です。WEBからのお問い合わせはこちら。日中であればお電話でのお問い合わせにも対応してます。




