「家」が二つある人の小規模宅地の特例適用
相続税の相談に応じていると、被相続人の生活の在り方は本当に様々だと感じます。先日相談にお見えになった方のお話を要約すると次のとおりです。
Aさんが死亡しました。Aさんの相続人は配偶者相続人のBとAB間のCです。Aは生前より余裕のある生活をしており、不動産を複数持っており、その不動産を行き来する生活でした。
Aは札幌市中央区で生まれ育ち、結婚してからもずっと中央区内の甲宅地及び建物にて生活をしていましたが、東京に単身赴任となり、東京都目黒区の乙マンションで生活をしていたときに亡くなってしまいました。乙マンションはAが賃貸経営用に購入したワンルームマンションであり、実際にずっと貸しに出していたものの、Aの単身赴任のタイミングで空き家になったため、単身赴任の期間だけと考え、Aは乙マンションで生活をしていました。
配偶者相続人のBは、ずっと甲宅地に居住しています。
Aは札幌市中央区で生まれ育ち、結婚してからもずっと中央区内の甲宅地及び建物にて生活をしていましたが、東京に単身赴任となり、東京都目黒区の乙マンションで生活をしていたときに亡くなってしまいました。乙マンションはAが賃貸経営用に購入したワンルームマンションであり、実際にずっと貸しに出していたものの、Aの単身赴任のタイミングで空き家になったため、単身赴任の期間だけと考え、Aは乙マンションで生活をしていました。
配偶者相続人のBは、ずっと甲宅地に居住しています。
Aさんの相続税申告においては、甲宅地と乙マンションの敷地それぞれが申告書に計上されますが、不動産のすべてをBが取得するとした場合、どちらの土地(敷地)に小規模宅地の特例(特定居住用宅地等)の適用が可能なのでしょうか。面積制限に余裕があれば、二つとも適用できるものでしょうか。
小規模宅地の特例の適用はどちらか
まず重要なのは、特定居住用宅地等として小規模宅地の特例の適用を受ける場合、適用を受けることができるのは「一の宅地等」に限られます。つまり、面積制限に余裕があるからといっても、複数の土地に適用できるわけではないのです。条文を確認しましょう。租税特別措置法69条の4③二によると、「特定居住用宅地等」とは次のように定義されています。
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(当該宅地等が二以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。)で~
注目すべきはかっこ書きの「宅地等が二以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る」という箇所です。政令を確認すると、措令40の2⑪に次のように記されています。
被相続人の居住の用に供されていた宅地等が二以上ある場合(~中略~)当該被相続人が主としてその居住の用に供していた一の宅地等
「主としてその居住の用に供していた一の宅地等」と記載されています。結局、複数の居住の土地があったとしても、そのうちの一つにしか小規模宅地の特例の適用ができないのです。
※「主としてその居住の用に供していた一の宅地等」というのは、平成22年の改正によって明記されました。それまでも制度趣旨から鑑みて一つの土地についてのみしか適用できないとされていましたが、平成22年の改正で明記されることで、それが条文上もはっきりとしました。
「主としてその居住の用に供していた一の宅地」とは
では、「主としてその居住の用に供していた一の宅地等」とは具体的にどのような宅地等を指すのでしょうか。たとえば「主としてその居住の用に供していた一の宅地等とは、年間で利用する日数がもっとも多い土地を指す」などと規定してくれていたら判断は簡単ですが、具体的な判断基準は明文化されていません。この判断について国税庁質疑応答事例においては、次のように規定されています。
被相続人等の居住の用に供されていたかどうかは、基本的には、被相続人等が、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判定すべきと考えられ、その具体的な判定に当たっては、その者の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して判定する
結局のところ、個別具体的に「総合判断する」ということです。
総合判断の際の判断材料
総合判断というと非常に難しいですが、次のような事柄が参考になります。上記は判断を行う際に考えられるヒントではあるものの、個別具体的に判断しなければならない以上は、すべての案件において上記の各事項だけ検討すればよいというわけではありません。
上記のAさんのケースであれば、東京都目黒区のワンルームマンションは一時的な使用目的であり、Aさんの家族構成等を考えると生活の本拠とはいえません。結局、甲宅地が生活の本拠と判断するのが妥当です。
このように小規模宅地の特例の適用にあたっては慎重な判断が必要です。相続税申告は判断に迷うことが非常に多く、相続人ご本人が進めることに限界があるといえます。札幌で相続税申告にお困りの方は札幌相続相談所にご相談ください。




