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意外と多い「個人向け国債」
相続税申告を多く取り扱っていると、相続財産のなかに個人向け国債がある場面にたびたび出くわします。個人向け国債は安定資産であり、なおかつ普通預金よりも利率が高い(2025年9月時点では、変動10年ものであれば年0.5%程度の利回りを期待できるようです)ため、経済的に余裕のある方々に選ばれやすい投資商品だといえます。個人向け国債は野村証券などの証券会社のみならず、札幌市に数多く存在する金融機関である北洋銀行や北海道銀行でも購入できることから、札幌で相続税申告対象になる案件で相続財産のなかに個人向け国債があることは珍しくありません。
個人向け国債は遺産分割の対象
個人向け国債は、不動産等の他の相続財産と同じように相続人の全員で遺産分割を行い、その行方を決めなければなりません。たとえば札幌市北区のAさんが死亡し、相続人は札幌市北区在住のB(法定相続分2分の1)、札幌市清田区在住のC(法定相続分2分の1)だとします。Aさんは金融機関で個人向け国債(額面1000万円)を保有していたため、相続人のBさんは単独で金融機関に出向き、額面1000万円のうちの2分の1について換金払い戻しがしようと考えていますが、それはできません。
個人向け国債は「遺産分割の対象」ですので、複数の相続人がいる状況で、一人の相続人からの換金請求には、金融機関は応えられないのです。裁判所もその見解を支持しており、ここでは詳しくは触れませんが「最判平成26年2月25日」でもそのことが述べられています。
個人向け国債の遺産分割の仕方
個人向け国債といえども、遺産分割の仕方は他の相続財産と同様で、次の3つの方法があるのです。現物分割
代償分割
換価分割
個人向け国債の現物分割
現物分割とは、現物をそのまま分ける遺産分割方法です。たとえば上記の札幌市のAさんが保有していた額面1000万円の個人向け国債を、その相続人である札幌市北区在住のBが取得する、とすることです。また、某大手金融機関に問い合わせたところ、個人向け国債は額面1万円ごとに分割することができるとのことでしたので、Aさんが保有していた国債を、札幌市北区のBが額面500万円相当を、札幌市清田区のCが残りの額面500万円相当の個人向け国債を取得する、ということもできるようです。
個人向け国債の代償分割
代償分割とは、ある相続財産を取得する代わりに、取得者の固有財産(ほとんどの場合はお金)を交付する遺産分割の仕方です。たとえば札幌市のAさんの相続財産が額面1000万円の個人向け国債のみであった場合、Bさんがその国債を取得する代わりに、Cさんに対して500万円の金銭を交付する、という方法が代償分割です。
代償分割のイメージ
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| Cさんの取得分 →金銭500万円 |
個人向け国債の換価分割
換価分割とは、対象となる遺産を処分換金して、お金を分ける遺産分割の仕方です。たとえばAさんが保有していた個人向け国債を売却(正確には中途換金)すると、換金の際の手数料が差し引かれて、約1000万円のお金に代わります。そしてBさんとCさんは、1000万円のうち話し合いで定めた割合(たとえば500万円ずつ)の金銭を手にするのが換価分割です。
換価分割のイメージ
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| Cさんの取得分 →金銭約500万円 |
個人向け国債、よく見られる遺産分割方法は換価分割
実務上は、換価分割によって個人向け国債を分けてしまうことが多いように思います。札幌で相続税相談に応じていても、やはり「個人向け国債」という形ではなく「預金」として相続したいとおっしゃる方が多いと実感します。相続税理士としても、換価分割が無難でよいと感じています。
個人向け国債の換価分割を行う際の具体的な手続きは、さらに次の2パターンに分けることができます。
1:被相続人の口座のまま換金して、「預金」として引き出す
個人向け国債を保有しているのが証券会社であれば認められない傾向がありますが、北海道銀行などの一般的な銀行で個人向け国債を保有していた場合、被相続人名義のまま換金して預金として払い戻すことが可能なことがあります。メリットとしては、何といっても相続人が国債の口座を開設する必要がないことです。
2:代表相続人の名義にして、代表相続人が換金してお金を分配するパターン
たとえばAさんの個人向け国債はBさんの単独名義にして、換金します。そして手にしたお金のうち遺産分割によって定めた割合をCさんに渡します。一般の銀行と異なり、証券会社で個人向け国債を保有していた場合は、被相続人名義のままで換金することが認められないケースが多いと感じます。一度相続人のうちの誰かの名義にしてからでないと処分が認められない、ということです。
このパターンであれば、たとえば札幌市のAさんが保有していた個人向け国債はBさんが形式上取得して売却し、売却代金のうちの一部をCさんに渡します。
このときCさんに渡したお金に「贈与税」がかからないか、という点が問題になりますが、遺産分割協議書を適切に作成すれば、贈与税の対象にはなりません。




