相続税申告で加算する生前贈与
相続または遺贈によって相続財産を取得した人が、被相続人から生前に暦年贈与を受けていた場合、一定期間の生前贈与について、相続財産に持ち戻しを行って相続税額を計算する必要があります。具体例を出しましょう。
札幌市東区のAさんが令和8年12月5日に死亡しました。Aさんの相続人は子どものBのみです。Aさんの「死亡時の」相続財産の総額は札幌市東区の自宅不動産を含めて4,000万円でした。
Aさんは生前に、自分が亡くなったら相続人になるのはBのみだと理解しており、どうせならBに早く財産を移したいと考えていました。Aさんは生前に相続税を専門としている税理士に相談したところ「生前(暦年)贈与」について教えてもらい、以下の生前贈与をBに対して行っています。AとBとの間の贈与はすべて贈与契約書があり、民法上有効に成立した贈与契約といえます。
令和7年5月5日 200万円の贈与 令和6年2月2日 100万円の贈与 令和5年11月11日 100万円の贈与
※Bさんは、令和5年から令和7年の間で他に受けた贈与はありませんでした。
Aさんは生前に、自分が亡くなったら相続人になるのはBのみだと理解しており、どうせならBに早く財産を移したいと考えていました。Aさんは生前に相続税を専門としている税理士に相談したところ「生前(暦年)贈与」について教えてもらい、以下の生前贈与をBに対して行っています。AとBとの間の贈与はすべて贈与契約書があり、民法上有効に成立した贈与契約といえます。
令和7年5月5日 200万円の贈与 令和6年2月2日 100万円の贈与 令和5年11月11日 100万円の贈与
※Bさんは、令和5年から令和7年の間で他に受けた贈与はありませんでした。
札幌市東区のBさんのケースであれば、相続税の申告を行う際に、死亡日から遡って3年間の贈与は相続財産に持ち戻すことから、令和7年5月5日の200万円贈与と令和6年2月2日の100万円贈与を相続財産に加算して相続税申告を行います。一方で令和5年11月11日の100万円贈与は持ち戻す必要はありません。
結局、相続税申告において加算するのは合計300万円の贈与であり、4,000万円の相続財産に300万円の贈与を加算して相続税額を計算し、その相続税額から令和7年に支払った贈与税額を差し引くことになるのです。
ところで、相続税申告における生前贈与の加算は「3年」から「7年」に改正されたことをご存知の方もいるでしょう。その改正は確かにありますが、経過措置があって、相続開始のタイミングによって加算する期間が異なります。まとめると次のとおりです。
令和8年12月31日までに発生した相続について→3年分を加算
令和9年1月1日~令和12年12月31日の間に発生した相続について→令和6年1月1日から死亡の日までの間になされた贈与を加算
令和13年1月1日に発生した相続について→7年分を加算
生前贈与加算の「期間」についての考察
では、AさんからBさんへの令和5年の贈与が令和5年11月11日ではなく、Aさんの令和5年12月4日であればどうでしょうか。結論からいうと、相続税申告において令和5年12月4日になされた贈与は加算する必要はありません。令和5年12月5日から相続開始までの間になされた贈与が加算対象になります。
結論だけ見ると非常に簡単な話のようですが、税理士は税法を扱う「法律家」ですから、法律家として、期間についてはきちんと「考察」が必要です。
そもそもですが、相続税法は民法の特別法です。特別法に定めがないことは一般法の規定によって解決されることになりますから、相続税の処理においても民法の定めが適用される余地があります。そして民法の「期間の計算」といえば、次の定めがあります。
民法第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
これは「初日不算入の原則」というもので、法律家であれば誰もが知っている条文です。相続税法においては、期間のカウントについての定めがなく、生前贈与加算においても民法第140条の規定が適用されるのではないか、とも考えられます。民法第140条が適用されると、「初日不算入」なのですから、札幌市東区のAさんのケースであれば令和12月5日に相続が開始したものの、初日は不算入で令和8年12月4日から3年間遡ると理解することもでき、そうなると令和5年12月4日の生前贈与も相続税において加算の対象になるのではないか、という疑問が生じるのです。
この点については、相続税の生前贈与加算について、民法第140条を適用して初日不算入で遡る必要はない、と理解しています。
民法第140条は期間の「起算」について定めた条文であり、ある日を起算日として期間を計算するときの条文だといえます。たとえば「決議の日から2年以内」という場合の期間のカウントで適用されます。
一方で相続税における生前贈与加算は、「遡る」ものであり、起算の場面とは異なると理解することができます。また、相続税の基本通達19-2においても、たとえば令和8年12月31日までに発生した相続については「相続の開始の日から遡って3年目の応当日から当該相続の開始の日までの間」の生前贈与を加算すると明記されています。この明記がなければ、法律家としては少し悩んでしまうところではあります……。




