個人に対する遺贈は「相続税」の対象
相続税といえば、被相続人から相続によって財産を取得した相続人が申告するものだと理解されています。その理解は正しいですが、相続税を負担するのは相続人だけではありません。「遺贈」によって財産を取得した個人も、相続税の申告をして相続税を納税しなければならないのです。遺贈というと、2種類あります。
一つ目が「包括遺贈」であり、遺言によって、財産の全部または一部を包括的に与えることをいいます。たとえば遺言書の記載が次のような形であれば包括遺贈に該当します。
私のすべての財産は、〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
私の全財産のうち3分の1は〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
私の全財産のうち3分の1は〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
二つ目が「特定遺贈」であり、遺贈する財産を具体的に特定して遺贈する方法です。たとえば遺言書の記載が次のような形であれば特定遺贈に該当します。
私が有する札幌市豊平区の土地は、〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
私が有する北洋銀行札幌西支店の預金は〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
私が有する北洋銀行札幌西支店の預金は〇〇(たとえば相続人以外の第三者)に遺贈する。
上記のいずれかの遺贈によって財産を取得した者(個人)は、相続税の課税対象になるので注意が必要です(贈与税の対象ではありません)。
(注)なお、遺贈は法人に対しても行うことが可能です。株式会社等の普通法人に対して遺贈が行われた場合は、相続税の対象にはなりません。遺贈を受けた法人が普通法人であるならば、それは法人税の課税対象となります。一方で遺贈を受けたのが公益法人であるのなら、法人税の課税対象にはならず、個人とみなされて相続税の対象になることがあります。
包括遺贈なら受遺者は相続人と「同一」の立場
包括遺贈であれば受遺者が相続人とほとんど同視できる一方で、特定遺贈では受遺者を相続人と同視することはできません。包括遺贈の対象になるのはプラス財産だけでなくマイナス財産も対象になることから、「全財産(プラスもマイナスも)は〇〇に遺贈する」とされた場合、受遺者は全財産を相続で取得した相続人と同じ立場です。遺贈対象が割合で示されていた場合も、法定相続分を有する相続人と同一の立場と考えることができます。
このようなことから、包括遺贈については次の条文があります。
(包括受遺者の権利義務)
民法第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
一方で特定遺贈であれば、遺贈の対象物は特定されたものですので、受遺者は相続人と同様に考えることはできません。「札幌市豊平区の土地を遺贈する」と遺言に書かれた場合、受遺者に移転するのは札幌市豊平区の土地の所有権のみであり、他の財産はもちろんのこと、マイナスの財産(相続債務)が移転することもありません。
包括遺贈と特定遺贈の相続税における扱いの違い
包括遺贈は相続とほとんど同じ、特定遺贈は相続と異なる、という点から、包括遺贈の受遺者と特定遺贈の受遺者には、相続税の申告において次のような差があります。被相続人の債務を控除することが可能である
受遺者が葬式費用を支出していた場合、葬式費用の控除も可能である
所得税の準確定申告の納税義務を承継する
被相続人の債務を控除することができない(そもそも債務を承継しない)
受遺者が葬式費用を支出していたとしても、葬式費用の控除は不可
所得税の準確定申告の納税義務は承継しない
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